「切った髪が、誰かの明日になる」ヘアドネーションという選択について、私が思うこと


先月あたりから、鏡越しにお客様から「実は髪、伸ばしているんです」と聞くことが続きました。ボブにしようか迷っていた方、縮毛矯正のタイミングで思い切って短くしようとしていた方。理由を尋ねると、何人かが同じ言葉を口にされました。「ヘアドネーションって、聞いたことはあるんですけど」。

正直に書くと、私自身も数年前まではその程度の理解でした。ウィッグになる髪の毛を寄付する仕組みがある、というくらいの認識で、それ以上深く考えたことはなかったように思います。ただ、実際にお客様の切った髪をお預かりする立場になってから、少しずつ考えが変わってきました。今回はその変化も含めて、当店でお手伝いしているヘアドネーションについて書いておこうと思います。

■ なぜ「北海道ヘアドネーション協会」なのか

ヘアドネーションを扱う団体はいくつかありますが、当店では北海道ヘアドネーション協会と提携しています。決め手になったのは、寄付いただいた髪を協会へ直接お渡しできる仕組みだったことです。郵送で個人が発送する必要がなく、サロン側で責任を持って橋渡しできる。この「間に立つ責任の取り方」が、自分にとって納得できるものでした。似たような取り組みをしている団体はほかにもあり、正直どこにするか迷った時期もありましたが、最終的には「顔の見える距離感で活動できるかどうか」を基準にしました。

対象となるのは、小児がんや先天性の無毛症、抜毛症、事故など、さまざまな理由で髪を失った18歳以下のお子さんたちです。協会がフルオーダーでウィッグを制作し、完全無償で届けています。

■ カットの現場で感じること

寄付のためのカットは、通常のカットと工程自体はそれほど変わりません。ただ、鏡の中でお客様が最後の長さを確認する瞬間の空気は、少し違うように感じます。ハサミを入れる前に、少し間が空くことが多いんです。伸ばしてきた時間を惜しむような、それでいてどこか晴れやかな表情。乾いた状態で、整髪料をつけずにカットするのですが、切り終えた毛束を手に取ると、思っていたよりずっしりと重みを感じることに驚かれる方が多い印象です。

以前、平日の午後、外は小雨が降っている日に、親子でご来店されたことがありました。詳細はぼかしますが、お子さんが「一緒に伸ばしてきた」髪を、お母様も同じタイミングで切られたという回のことです。二人分の毛束を並べたとき、こちらまで少し胸が詰まるような感覚がありました。

■ 提供の条件について

寄付いただける髪の長さは15センチ以上、できれば31センチ以上あるとより望ましいとされています。カラーやパーマをしている髪でも寄付は可能で、年齢や性別も問いません。当店でカットを含む施術をご予約いただき、施術代金はお客様にご負担いただく形になります。カット料金は7,700円です。

この金額について、正直に思うところを書いておきます。安い金額ではありません。ただ、これは「髪を切る」という行為に対する対価というより、その髪が確実に協会へ届き、ウィッグとして誰かの元へ渡るまでの工程に関わる費用だと私は捉えています。すべての方に強くおすすめしたいわけではなく、あくまで選択肢のひとつとしてお伝えしたいというのが本音です。

■ 向いている方、そうでない方

長く伸ばすこと自体が生活スタイルに合わない方もいらっしゃいますし、切りたいタイミングと長さの条件が合わないこともあります。また、ヘアドネーションを目的にすると、途中でイメージチェンジをしたくなっても髪型の選択肢が限られてしまう時期が出てきます。そのあたりにストレスを感じそうな方には、無理にはおすすめしません。逆に、もともと長く伸ばす予定があった方や、伸ばす過程そのものに意味を見出せそうな方には、選択肢として一度考えてみていただく価値はあると思います。

■ 通常のカットとの違い

普段のカットでは、その時々のお客様の希望やお顔立ち、髪質に合わせて長さやレイヤーを決めていきます。一方でヘアドネーションを前提にしたカットは、まず「寄付できる長さを確保する」ことが軸になり、そのうえでどう仕上げるかを一緒に考える形になります。順番が少し逆になるイメージです。どちらが良い悪いということではなく、優先したいものが違う、という話だと思っています。

■ よくある不安について

カラーやパーマをしている髪でも寄付できるのか、という質問はよくいただきます。先ほど書いた通り可能です。また、痛みについてですが、カット自体は通常のカットと変わらないので、施術中に特別な痛みが生じるということはありません。持続性について心配される方もいますが、これは寄付する髪の話ではなく、寄付後にご自身がどんな髪型で過ごすかという話になりますので、そのあとのスタイルについても遠慮なく相談していただければと思います。

現在の受け入れ状況については、店舗や時期によって変動することがあります。当店では公式LINEを通じてご予約や状況確認をお願いしており、タイミングによっては受け入れを一時的に調整させていただくこともあります。ご検討いただける場合は、まず現在の受け入れ状況を確認いただくところから始めていただくのが確実だと思います。

■ 最後に

ヘアドネーションは、誰かに強制されてするものでも、しなければいけないものでもないと思っています。ただ、髪を切るという日常的な行為の先に、こういう選択肢があることを知っておいていただくだけでも、何か違う気持ちで鏡の前に座れる日が来るかもしれません。興味を持たれた方は、まずは気軽にご相談いただければと思います。

美容室 雨とランプ
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 定休日:   第2/第3月曜日

美容室 凪の旅先
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